「動き」を通しての理解-方向、方角の学習から学んだこと

 現場では体を動かすことを通して学んだほうがいいと話になることがある。実際に体を動かすことで学ぶことは大事だなと思う反面、誰かに「それはどうしてですか?」と問われると、答えに窮してしまうため、悶々としていたわけである。
 話は変わるが、私たちはどうやって方向(左右上下)、方角(東西南北)を覚えたのだろうか。よく現場で目にする学習方法をあげてみたい。児童の手を右方向に向けて、「こっちが右だよ」と教える。右利きの場合、「お箸を食べている手は?」と聞いて、右手をあげてもらう。「そっちの手が右手だよ」と教える。これらも一種の動作を通して学ぶ例と言ってよいだろう。しかし、まだしっくりとこない。
 私の関わってきた子どもたちがあることを教えてくれた。対象は、方向について学んだことのない子である。ある教材を提示した。左右に溝のある木板を2列準備する。奥の列は見本。手前は子どもが操作する。中央に手を置いて、左右に動かし、どちらかに置いてある見本の丸木板を確認する。そして、今度は、子どもが操作列の、木板を自ら見本と同じ方向に操作するというやり方だ。
 以上の学習には3つのポイントがあると考える。一つ目に、見本の存在。二つ目に、軸(中心)の存在。三つ目に動作である。
 第一に、見本があることで、何をどうしたらよいのかが明確になる。ここでいうと、木板を左右どちらかの方向に持っていくということである。
 第二に、軸の存在についてである。中心に軸があることで、左右上下の方向が生まれる。逆にそれが定まっていないと、方向は生まれない。
 第三に、動作についてである。軸を中心に、見本の方向に動かす。そのことを通して、はじめて左右上下の方向、そして東西南北の方角がうまれる。
 最後に動きの中で理解するということは、まず、何をやるのかという見本があり、自分がどういった動きをするのかという軸があり、かつ動作することで学びとなるのではないと結論づけることとしたい。